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第224号 鼻塞ぎ療法における虫類薬

蝶々で鼻をふさぐ

鼻を塞いで、病気を治療するという面白い療法が、
やはり、「中国民間療法大典」に記載されています。

古い時代、
道士でもある葛洪(カッコウ)の、「肘后備急方」には、死人を生き返らせたという、処方が記載されています。
急死した死人の鼻に、酒を浸した綿を詰めて、生き返らせたとあります。
まあ、道士ですから、あまり信用できませんが、面白い話です。
また、さまざまな、急死、頓死した人を救う処方が、
羅列されています。
大変面白いのもあるのですが、虫類薬の範囲ではないので、ここではふれません。

「中国民間療法大典」中原農民出版社  1999年11月第2版  劉道清先生主編 より

鼻痔(鼻息肉)
胡蝶散:胡蝶(コチョウ:蝶々の種は特定されていません)を、加熱して乾燥させ研いで粉にする。適量をガーゼで包み、鼻をふさぐ。


本題から外れますが、朝顔の花を用いた処方があるので紹介します。
朝顔の種は、生薬としてよく用いられていますが、花を用いるのは珍しい。
また、これから朝顔の季節でもあるので。

アレルギー性鼻炎
朝顔の花をひとつ。つき潰して、鼻をふさぐ。

萎縮性鼻炎
独角蓮(ドッカクレン)100g、蟾酥(センソ:ガマの油)1.5g、麝香(ジャコウ)1g、氷片(ひょうへん)3g。
一緒に研いで細かい粉にする。清油?または甘油とまぜて硬膏とする。ナツメの種位の大きさにして、鼻をふさぐ。

喉痺(ノドのしびれ、痛み)
巴豆霜(ハズソウ)、蟾酥(センソ:ガマの油)、麝香、氷片各3g、山豆根1.5g、硼砂、老姜粉各0.6g。
それに、水を加えて糊状にする。
適量を取り、ガーゼに包んで鼻をふさぐ。
また、この処方は、扁桃腺炎も治す。


瘧疾
蜘蛛(クモ:これまた種類は特定されていません。)1匹
蜘蛛を紙のなかに丸め込み、それを発作前の2時間、鼻を塞ぐ。
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第223号 クシャミ療法  その3

小児の急性、慢性の驚風(キョウフウ:ひきつけ) 

◎生川烏尖3個、金赤蜈蚣半匹を、酒に浸してから炙り、乾燥させる。
それに、麝香を少量加えて、研いで、極めて細かい粉にする。
その少量を、鼻孔に吹き付け、クシャミを起こさせる。
同時に、それを薄荷湯にいれて服用する。

中暑(暑気あたり)
◎シャ薬
蟾酥(センソ:ガマの油)63g、雄黄126g、朱砂126g、麝香10.5g、冰片0.5g、
大黄210g、麻黄126g、丁香21g、蒼朮110g、天麻126g、甘草84g、
(又は、蒼朮、生半夏、生南星、雄黄、朱砂、蟾酥各6g、北細辛、ガソウ各3g、麝香0.9g)
両方とも、それぞれ研いで極めて細かい粉にする。
用いる時は、少量を鼻に吹き付けクシャミを起こさせる。

◎蟾酥1.5g、冰片1.5g、雄黄1.5g、牛黄0.9g、細辛3g
最初に蟾酥をつきつぶし、それに他の薬を加えて、一緒に研いで極めて細かい粉にする。
適量を鼻孔につけてクシャミを起こさせる。

◎開関散  
灯心灰30g、羊躑躅3g、細辛、蟾酥、ガソウ各6g、
牛黄、冰片、麝香(ジャコウ)各3gを一緒に研いで細かい粉にする。
少量を鼻孔につけてクシャミを起こさせる。


産後の子宮脱
◎全蝎(ゼンカツ:サソリ)
炙った全蝎を、研いで細かい粉にする。少量を鼻孔につけてクシャミを起こさせる。


喉閉
◎白僵蚕(ビャッキョウサン:カイコが白僵菌に感染して死んだ虫体)2匹、
 韮の栽培地の白頸蚯蚓1匹、全蝎1匹、蛇の抜け殻1匹分、
 以上のすべてを加熱して乾燥させる。一緒に研いで極めて細かい粉にする。
 上記の薬0.9gと、上清散2.1g、冰片0.3gとを混ぜて、鼻孔につけてクシャミを起こさせる。
◎如神散:雄黄、藜芦、玄参、白僵蚕、白礬各6g、乳香0.3gを一緒に研いで極めて細かい粉にする。
  0.3gを鼻孔につけてクシャミを起こさせる。


歯痛
◎開関散
 白芷、細辛、良姜、ヒハツ、香附、川椒、露蜂房以上を一緒に極めて細かい粉にする。
 少量を鼻に吹き付けクシャミを起こさせる。
 痛む歯を冷やせば、なおよい。
◎麝香一字散
 蠍梢、細辛、良姜、ひはつ、胡椒、露蜂房(ロホウボウ:蜂の巣)他各30g、研いで極めて細かい粉にする。
 少量を鼻孔につけてクシャミを起こさせる。
 1.5gを取って、歯をこすれば、なお効果的である。


萎縮姓鼻炎
◎百合150g、蟾酥0.9g、乳香、没薬、冰片、麝香各0.3g  一緒に細かい粉にする。
 それに、胡麻油、ペニシリン、液体パラフィン適量を加えて軟膏状にする。
 それの少量を綿棒につけて、鼻孔に入れ、クシャミを起こさせる。
 1日に、2、3回。


破傷風に罹患し口が開かない場合
◎蜈蚣、全蝎、草烏、天麻、白芷 各同量を、研いで細かい粉にし、酒を加えて糊状にする。
 適量を取って布にいれる。
 それを丸めて鼻孔をふさぎクシャミを起こさせる。

 

これで、この項終わり。



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第221号 クシャミ療法

クシャミを起こさせて、病気を治療する、という面白い治療法があります。

「中国民間療法大典」という本には、様々な面白い治療法が記載されています。
千ページ余の大冊です。
再販の前書きによれば、現代中国で「我が国で第一の民間療法の大典」だそうです。
台湾でも出版され、日本語にも翻訳され、世界の30数カ国で、発行(何語かは、かかれていません)されているそうです。
とはいうものの、日本語訳は見たことがありませんが。

面白い治療法の一つが、クシャミ療法です。
「中国民間療法大典」中原農民出版社  1999年11月第2版  劉道清先生主編 より

小児の急性、慢性の驚風(キョウフウ:ひきつけ)   
◎犀角丸(サイカクガン)
犀角、麝香、牛黄、青黛、地竜各0.3g、朱砂、防風各30g、
蚕紙(カイコの卵が産み付けられた紙)1枚(焼く)、蟾酥(センソ)1.5g、
天漿子(てんしょうし:イラガの繭。雀瓮ともいう。)、蝉退(センタイ)各27匹分、
烏梢蛇(ウショウダ)の肉15g、を一緒に細かい粉にする。
それに、ハチミツ適量で練って、黍の実くらいの大きさの粒にする。
その1粒に水を加えて溶かし、鼻のなかにたらし、くしゃみを起こさせる。

☆犀角丸の解説
犀角丸の内容は、大変面白いので、特に解説します。

犀角:犀(サイ)の角(つの)。哺乳動物のサイ(リノ)のツノのことです。
現在は、絶滅危惧種で、ワシントン条約で、取引が禁止されています。
強い解熱作用があります。
意外でしょうが、ほんの少し前まで、日本で使われていました。
いまから、30年位前、私の薬局でも、ウサイカクサン(多分、烏犀角散という漢字)という、小児薬がありました。
子供の、風邪、解熱薬でした。
あまり、売れないので、いつの間にか、取り扱いを中止しました。
多分 今は無いでしょう。サイの角が手に入りませんからね。
成分表示には、間違いなく「犀角」が入っていました。
多分、麝香もはいっていたと思います。
当時は、変なものがはいっているな、と思っていました。

麝香:ジャコウ。ジャコウジカ(musk deer)の雄の腹部に麝香腺がありそこから分泌されたもの。
雌を引き付けるための匂い。生薬であり、香料でもあります。
いわゆる高貴薬で、大変高価です。
香水、オーデコロンのなかには、ムスクの香りというものがありますが、
その麝香、もしくはそれを模した香りをさします。
現在、入手困難な薬の一つです。
瀕死の病人に対しての、起死回生薬でもあります。

牛黄:ゴオウ。牛の胆嚢にできた石。つまり、牛の胆石。
石が出来るということは、病気。従って、たまにしか見つかりません。
千頭の牛を屠殺しても、一つ位しか見つかりません(数は、不正確)。
中国では、人工牛黄を作る研究がなされていますが、
今のところ、人工的に作ることが出来ません。
これまた、大変高価です。
清熱解熱薬となっていますが、その効能効果は、実に多彩で、簡単に説明の使用があります。
これまた、起死回生の薬でもあります。

青黛:セイタイ。植物。外用では、口内炎、扁桃腺炎などに効果があります。内服としては、咳に効果があります。

地竜:ジリュウ。大地にいる竜、つまりミミズのことです。
蚯蚓は、優れた解熱剤であり、ほとんどの新薬よりも、すぐれています。
しかも、副作用はありません。
大いに使われていいはずなのですが、偏見と無知から、一般的には使われていません。
解熱だけではなく、気管支拡張作用もあります。
ゼンソクや気管支炎で息苦しいのがすぐに楽になります。
現代的な用法では、アトピーのかゆみ、脳梗塞の後遺症などにも用いられています。
また、鎮静作用があります。
うちの薬局では、地竜の錠剤も顆粒も、扱っています。ものがものですから、あまり、使いませんが、ここぞという時に使うと、効き目は、実にシャープです。

朱砂:シュシャ。これは、水銀の化合物。硫化水銀。
当然、日本では使われていません。
しかし、中国の少なからぬ処方に用いられています。

防風:ボウフウ。これは、植物性生薬。まあ、面白くないですね。
発熱、悪寒、頭痛、関節痛などの症状に用います。
蚕紙:サンシ。蚕退紙(サンタイシ)ともいいます。
蚕に卵を生ませる時に、紙の上に卵を産み付けさせます。その紙を指します。
止血作用があり、崩漏(ほうろう:子宮出血の特にはなはだしいもの)、帯下(こしけ)、吐血、鼻血、血便に効果があるとされています。

蟾酥:センソ。いわゆるガマの油。ガマガエルの皮脂腺より、分泌された液。
きわめて毒性が強い。
強心作用があり、心臓の薬として用いられている。
そのほか、鎮咳作用、抗炎症作用などがあります。
ガマの油は、日本でも現役の生薬です。救心、六神丸の主剤です。
こんなの古臭いと思われるでしょうが、
現代医学(西洋医学)でも、心臓の薬として、ジギタリス製剤が、広く用いられています。
ジギタリスは古くから用いられて入る植物です。
これまた毒薬です。
動物植物の違いはありますが、強心剤が天然の生物系生薬であることは、東西で同じです。

天漿子:テンショウシ。イラガの繭。
雀瓮(じゃくおう:字義ではスズメのカメ)ともいいます。
木の枝に小さい卵のような形をして、付いています。
日本では、別名、すずめのたご、スズメの小便たご。
小児のヒキツケなどに用いる。

蝉退:センタイ。蝉の抜け殻。
蝉の抜けがらは、現代でも、ひっそりと使われています。
「消風散」という漢方薬の成分として使われています。
しかし、飲んでいる人は、セミの抜け殻が入っているとは、気が付かないでしょう。
風邪の熱、喉の痛み、声がれ、風疹の痒み、夜泣き、破傷風に効果があるとされています。
「セミの抜け殻は、皮膚のようなものである。
だから、皮膚病に効果があるのだ。」と、書いている古い医書もあります。

烏梢蛇:ウショウダ。黒い蛇なので、烏という字が入っている。
日本にはいない種類の蛇ですが、日本語で「くろへび」ともいいます。
面白いことに、この「くろへび」を「青大将」(浙江中薬手冊)と呼んでいる地区もあるようです。
もちろん日本の青大将ではありません。念のため。



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プロフィール

鈴木 覚

Author:鈴木 覚
埼玉県で薬局を開局しています。
漢方の勉強と趣味を兼ねて資料を集めている内、虫類にも面白い薬効があることに気がつきましたので2006年からブログをはじめ、今までご紹介してきました。
是非多くの方々に虫類の薬効を広く知っていただければ幸いです。
初めての方は【第1号】はじめに をご覧ください。

ご質問ありましたらtwitterにて。
ただし、虫に関する話題に限ります。



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