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【昭和薬局】薬剤師  鈴木 覚
〒351-0035 埼玉県朝霞市朝志ヶ丘1-2-6-106
【電話】048-473-7830
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第250号 蚊の目玉スープについて

蚊の目玉スープについて


蚊の目玉のスープについて、「昆虫料理研究家」の内山さんから問い合わせがありました。
そういえば、蚊の薬用効果については、見たことが無いな、と気がつきました。


それで、蚊および蚊の目玉の薬効について、調べてみました。


調べてみましたが、見つかりませんでした。
梅村甚太郎先生の「昆虫本草」には、蚊の項がありますが、
薬効については、全く記載されていませんでした。


害虫としての記述だけでした。
中国の古典、たとえば李時珍の「本草綱目」などにも、
蚊の薬効についての記載はありません。


また、比較的変わったものの記述が多い、
「本草綱目拾遺」にもありませんでした。


そこで、蚊および蚊の目玉の薬効については、あきらめ、
今度は、料理関係を調べてみました。


蚊の目玉スープ(蚊子眼晴湯)は、料理の一種だから、
料理の本にあるかもしれないと、料理関係も探してみましたが、
やはり見つかりませんでした。


ゲテモノ好きそうな、四川とか広東の料理本にも当たってみました。
蛇とか、猫などの料理の作り方はありましたが、
蚊の目玉スープは、ありませんでした。


中国語のネットでも、『蚊の目玉スープ(蚊子眼晴湯)』については、
ほとんど出てきません。


つまり、『蚊の目玉スープ(蚊子眼晴湯)』なるものは、
中国には存在しないということです。
日本の巷説には、広く存在し、中国の巷説では、少し存在するようですね。


中国語のネットで、
唯一つ、「蚊の目玉スープ(蚊子眼晴湯)」のもとになった話
(逸話、アネクドート)らしいのがあったので紹介します。


ただし、出典は不明です。


一応、「大平広記」も参照しましたが、蚊についての記載はありませんでした。


***************************************************************

ある時代のこと、ある秀才(原文では挙人ですが、
秀才のほうが日本語では通りが良いでしょう)がいました。
金持ちの息子で、北京に進士の試験を受けるために行きました。


北京についてから、カッコいい飯店(ホテル又は、レストラン)を探し出しました。
店に入ってから、懐から十両の金を出して、


「最高の料理を出してくれ。」と言いました。


店員が、
「お客様、当店の“天下第一の料理(世界一美味い料理)”は、銀貨で千両です。」


「なんだと!?
 どんな料理が銀で千両なんだ?
 熊の手だって、ナマコだって、そんなに高くないぞ!
 金ならあるぞ。それを注文しよう。もって来い。」


しばらくして、”世界一美味い料理(天下第一の料理)”が出来上がりました。


それは、スープの一種で、黒々しており、醤油に似ていました。
スプーンですくって飲んでみると、実がありませんでした。
そっと、口に入れてみました。


思わず、「美味い!」と叫びました。

味は、美味い。
しかし、考えてみると、壱千両のお金は、
北京でも、大きな家が買える大金だ。


こう思うと、後悔して、心が痛みだしました。


そして、値切ろうと、店員を呼んで、こう言い出しました。
「このスープは、壱千両の価値があるといったが、
このスープにそれ程の価値があるのかね?


確かにこのスープは美味い。
しかし、醤油のスープと少ししか違わない。
私をばかにしているのかね?」


店員は、微笑みながらこう答えました。


「お客様は、ご存知ですか?
このスープの材料は蚊です。
良くご覧になってください。
これは、蚊の目玉のスープ(蚊子眼晴湯)です。」


秀才(挙人)は驚いて、
「蚊のスープ?これは、蚊の目玉で作ったスープなのか?」


彼は、いぶかりながら、聞き返しました。


「蚊の目玉のスープをどうやって作るのか?
“鷺の脚の肉(脚にはほとんど肉はありません)、
蚊の腹の中の油(あったとしてもほとんどゼロ)”
という言葉を聞いたことがある。
蚊の目玉のスープ(蚊子眼晴湯)というのは、聞いたことが無い。」


店員は、慌てずに答えました。


「お客様、“雲南の十八怪、三匹の蚊で一皿の料理”というのを、
聞いたことは、ございませんか?


我が飯店の食材は、すべて雲南から取り寄せています。
雲南には、蚊が多くいます。山の断崖絶壁の上には、
数知れない多くの蝙蝠がいて、もっぱら蚊だけを食べています。


蚊の体は、消化されますが、蚊の目玉は、
硬くて消化できずに、糞の中に残ります。


山の民は、道具を持って、縄梯子で崖によじ登り、
窪みにたまっている蝙蝠の糞をかき集めます。
それをフルイにかけ、洗って、乾燥させます。


それで、ようやく蚊の目玉が得られます。
お客様、一杯のスープには、どの位の数の蚊の目玉が必要でしょうか?
それを、雲南から北京にまで運ぶのに、どのくらいの費用が必要でしょうか?


『天下第一の料理』というのは、味や料理法ではなく、
材料が容易に手に入らないからです。
お客様、それでも、このスープが、壱千両の銀に値しない、と言われますか?」


『天下第一の料理』というのは、こういうことだったのか。


秀才は、口をポカンと開けて、懐から銀表(小切手)を取り出した。

***************************************************************


以上が、『蚊の目玉のスープ』の元となった逸話のようです。



ここに出て来る『蝙蝠の糞』は、漢方では、
『夜明砂(ヤメイシャ)』とう名前で、薬です。


砂というのは、糞ということです。夜明というのは、
蝙蝠は夜行性で、夜でも目が良く見える(明)という意味です。


生薬名に「明」という字が入っていたら、
多くは、視力を向上させるという、意味です。
『蝙蝠の糞(夜明砂)』の薬効の一つに、視力向上というのがあります。

さて、『蝙蝠の糞』に、蚊の目玉が残留するかどうかですが、良くわかりません。
文献に、そういうことは書かれていませんので。


多分、蚊の目玉も、消化されて、残留しないと思います。


結論:蚊の目玉スープ(蚊子眼晴湯)なるものは、存在しません。
   誰が、言い出したのかは解りません。主に、日本で流布している巷説です。
   そういうことも、中国では有るだろうということで、真実らしく思えたのでしょう。 



『蝙蝠の糞』=『夜明砂(ヤメイシャ)』の薬効について、いずれ書いてみます。
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第249号 トビケラの薬用効果

多発性硬化症には、冬虫夏草


多発性硬化症は、自己免疫疾患の一つであって、
国によって、難病に指定されています。
所謂、難病の多くが、免疫系統の病気です。


多発性硬化症は、脳や脊髄など中枢神経が傷む病気です。
電線には、外に電気が出ないように(ショート)ビニールなどで覆われています。
その一部でも壊れて、電線がむき出しになると、
思わぬところに電気が行き(ショート:漏電)、多くの困ったことが起こります。


同じように、神経には、それを覆うさやの役目を果たす「髄鞘(ずいしょう)」
というのがありますが、炎症によって壊れる脱髄を起こします。
視神経が傷つくと、物が見えにくくなります。


脳幹なら、食べ物が飲み込みにくくなったり、話すのが困難になったりします。
脊髄ですと、手足のしびれや歩行困難、トイレが近くなるなどの症状が起こります。


原因は、はっきりとは、解っていません。
有力な見方としては、本来は細菌やウイルスなどから身を守る免疫機能に異常が生じ、
逆に自分を攻撃する自己免疫疾患であろうということです。


欧米の国際研究チームが、多発性硬化症患者の遺伝子の塩基配列を調べたところ、
自己免疫疾患である関節リウマチや1型糖尿病、潰瘍性大腸炎との
共通点が多いことが分かったそうです。


多発性硬化症は、他の免疫系疾患と同様に、女性の方が多く、
20~40歳で発症することが多いようです。


治療は、急性期に入った場合、他の免疫系の病気と同様に、
ステロイド剤が使われます。
しかし、ある程度しか効果がありません。


この多発性硬化症の薬として、去年から、「フィンゴリモド塩酸塩」
(商品名:イムセラ= 田辺三菱製薬。商品名:ジレニア=ノバルティスファーマ)
が発売されています。


この、「フィンゴリモド塩酸塩」は、冬虫夏草の一種である
ツクツクボウシタケ(Isaria sinclairi Kobayasi)由来の天然物である
マイリオシンから、導き出された物です。


蝉の幼虫にキノコが寄生したもので、セミタケといわれている冬虫夏草です。
ただし、残念ながら「フィンゴリモド塩酸塩」は、多発性硬化症に対して、
少し有効な程度です。また、副作用もあります。


冬虫夏草は、本来は、昆虫の遺体にキノコがはえたものの全てを含みます。
しかし、一般に出回っている冬虫夏草は、ほとんどコウモリ蛾の幼虫に
キノコが生えたものです。


天然のだけでは間に合わなくなってきていますので、
現在は、養殖されたもの、組織培養されたものがあります。


また、蝙蝠蛾由来の冬虫夏草については、多くの研究がなされています。




そこで、参考までに、その薬理作用について、少し書いてみます。

◎免疫力を強化する。
◎マクロファージの食作用を増強する。
◎体液免疫機能を増強させる。
◎細胞免疫に対して、調節作用がある。
◎Nk細胞(ナチュラルキラー細胞)の活性を増強する。

・・・などなど。



このように、冬虫夏草(蝙蝠蛾)は、免疫系に対してよい働きがあります。


してみると、セミ由来の「冬虫夏草」から、免疫系の病気である
「多発性硬化症」に効く成分が開発されても、
不思議なことでは、無いでしょう。


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鈴木 覚

Author:鈴木 覚
埼玉県で薬局を開局しています。
漢方の勉強と趣味を兼ねて資料を集めている内、虫類にも面白い薬効があることに気がつきましたので2006年からブログをはじめ、今までご紹介してきました。
是非多くの方々に虫類の薬効を広く知っていただければ幸いです。
初めての方は【第1号】はじめに をご覧ください。

ご質問ありましたらtwitterにて。
ただし、虫に関する話題に限ります。



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